SWAN SONG
3,080円FlyingShine/1.03GB・声優13名・瀬戸口廉也脚本
FlyingShineの「SWAN SONG」は、 大地震で壊滅した街を舞台にした群像劇です。 価格は3,080円、容量1.03GB、声優13名。 シナリオは瀬戸口廉也が手がけています。
スコアは100点満点中85点。 シナリオ20点は、当サイトで 『さよならを教えて』に続く2本目の満点です。
まず題材について
物語は12月24日、山間の都市が大地震に襲われるところから始まります。 平穏な街が一夜にして瓦礫の廃墟と化す。 一人暮らしの大学生・尼子司(CV:広末涼)は奇跡的に生き延び、 彷徨ううちに自閉症スペクトラム障害を持つ少女・八坂あろえ(CV:草柳純子)と出会います。
吹雪の中で身を寄せた古い教会に、同じく家を失った若者たちが集まってくる――。 閉じた空間に他人同士が押し込められるという構造が、 そのまま物語の推進力になっています。
シナリオ20点をつけた理由
評価の核心は、登場人物の誰も「正しい役」を割り当てられていない点にあります。
極限状況の物語では、善人と悪人を配置して対立させるのが定石です。 本作はそれをしません。全員が状況に押されて選択を誤り続ける。 誰かを責めれば済むという逃げ道が、読者にも用意されていません。
主要人物を挙げると、佐々木柚香(CV:佐々木柚香)、川瀬雲雀(CV:榎津まお)、 乃木妙子(CV:北都南)、小池希美(CV:西田こむぎ)、 田能村慎(CV:滝沢アツヤ)、鍬形拓馬(CV:桜坂幸平)。 この人数が全員、別々の壊れ方をしていきます。
もうひとつ挙げたいのが八坂あろえの描き方です。 自閉症スペクトラム障害という設定を、 物語を動かす道具としてではなく彼女固有の条件として扱っている。 同情を誘う装置に落とし込まなかった判断は、2012年の作品として相当に慎重です。
イラストは川原誠。 絵柄は万人受けするものではありませんが、 作品の空気と完全に一致しています。 綺麗な絵だったらこの話は成立しなかったでしょう。
声優13名という編成が効いている
クレジットされた声優は13名。 3,080円という価格帯では異例の規模です。
群像劇にとってこの人数は必須条件です。 複数の視点が同等の重みを持つ構造なので、 誰か一人でも声がなければバランスが崩れます。 主人公の尼子司にまでCVが付いている点も、本作の設計を物語っています。
ただし技術面は完全に2012年のものです。 解像度800×600ハイカラー、容量1.03GB、 対応OSはWindows XP/Vista/7。 Windows 10/11の記載はありません。 体験版もサンプルムービーもないため、 購入前に動作を確認する手段がない点は理解しておいてください。
必要スペック自体はPentium III 500MHz以上、VRAM 4MB以上と 今回の44作品中で最も低く、性能面で引っかかることはまずありません。 問題はOSの対応状況だけです。
5軸スコアと評価の内訳
シナリオ20点は当サイトで2本目の満点です。 コスパ(19点)も高く、3,080円でこの読書体験なら 価格に対する満足度は極めて高いと言えます。
ビジュアル(13点)が最低評価ですが、 これは解像度800×600という仕様に対する数字であり、 川原誠の絵そのものへの評価ではありません。 音声(17点)は声優13名という編成を素直に評価しました。
作品スペック一覧
| 正式タイトル | SWAN SONG |
|---|---|
| ブランド | FlyingShine |
| 価格 | 3,080円 |
| 販売日 | 2012年6月1日 |
| 作品形式 | アドベンチャー(音声あり・音楽あり) |
| 年齢指定 | R-18(ソフ倫受理番号 0005126D) |
| ジャンルタグ | 鬱/サスペンス/シリアス/格闘/命令・無理矢理/血液・流血/リョナ ほか |
| シナリオ | 瀬戸口廉也 |
| イラスト | 川原誠 |
| 出演 | 広末涼(尼子司)、草柳純子(八坂あろえ)、佐々木柚香(佐々木柚香)、榎津まお(川瀬雲雀)、北都南(乃木妙子)、西田こむぎ(小池希美)、滝沢アツヤ(田能村慎)、桜坂幸平(鍬形拓馬)ほか計13名 |
| ファイル容量 | 1.03GB |
| 動作環境 | Windows XP/Vista/7、CPU Pentium III 500MHz以上(推奨800MHz以上/Windows 7は1.0GHz以上)、メモリ256MB以上(Vistaは512MB、7は1GB以上)、VRAM 4MB以上(推奨8MB以上)、800×600ハイカラー、DirectX 9.0以上 ※Mac非対応 |
| 体験版 | なし(サンプルムービーもなし) |
良かった点・気になった点
良かった点
- 登場人物の誰にも「正しい役」を割り当てない構造
- 全員が別々の壊れ方をしていく群像劇としての密度
- 八坂あろえの設定を同情の装置に落とし込まなかった慎重さ
- 3,080円で声優13名という異例の編成
- 川原誠の絵柄が作品の空気と完全に一致している
- 必要スペックが今回の44作品中で最も低い
気になった点
- 解像度800×600は現行環境では明確に厳しい
- 対応OSがWindows 7まで。現行環境での動作は保証外
- 体験版もサンプルムービーもなく、購入前に一切試せない
- 題材が重く、読む側に相応の体力を要求する
- 音楽担当のクレジットが記載されていない
結論:誰が買うべきか
読み物として強度のある作品を求めていて、重い題材に耐えられる人。 条件はこれだけです。3,080円という価格に対して、 得られる読書体験の密度は当サイトで最上位クラスです。
癒しや快楽を求める人には全く向きません。 本作が提供するのは、極限状況で人がどう壊れるかを見続ける時間です。 ここを取り違えると、ただ消耗して終わります。
購入前に確認できる手段が何もない点は、正直に言って不親切です。 対応OSがWindows 7までである以上、動作は賭けになります。 それでも、この価格でこのシナリオが読めるという事実は動きません。 当サイトがシナリオ20点を付けた2本目の作品です。