ものべの 全部入り
13,037円Whisp/3作品パック・ボーカル26曲収録
Whispの「ものべの 全部入り」は、高知の山村を舞台にした伝奇アドベンチャー 『ものべの』シリーズを、アペンドもボイスドラマも丸ごと束ねたパッケージです。 価格は13,037円。同じく全部入り形式の『まいてつ』と同額ですが、 こちらは3作品パックで、性格はかなり違います。
スコアは100点満点中90点。 音声とシナリオが強く、その代わり「既に持っている人がハマりやすい落とし穴」を 抱えた一本でもあります。そこを含めて順に見ていきます。
「全部入り」の3作品構成と重複購入の罠
収録されているのは、全アペンドを適用済みの『ものべの -happy end-』を中心に、 無印版に予約特典『Hシーン大増量ディスク』を適用したもの、 さらに雑誌bugbug250号記念のシーンを加えた3本立てです。 これにボイスドラマ、システムボイス、着ボイス、ボーカルコレクション全26曲(wave形式)、 壁紙6種が付属します。
ここで必ず確認してほしい注意点があります。 販売ページにも明記されているとおり、本作は『ものべの』『ものべの -happy end-』 『ものべの -happy end- アペンド&ボイスドラマフルセット』と内容が重複します。
妖怪が日常にいる村を描く伝奇シナリオ
シナリオは進行豹と詠野万知子。原画はCuraで、 妖怪のデザインはTam-Uが担当しています。
舞台は高知の山深い寒村・茂伸(ものべの)村。 主人公の沢井透が妹の夏葉を連れて6年ぶりに帰省するところから物語が始まります。 家守妖怪【あかしゃぐま】のすみ、幼馴染のありす、傘の妖である飛車角。 妖怪が当たり前に生活に溶け込んでいる田舎という世界観が本作の核です。
村に伝わる土着信仰【ひめみや流】の夏祭りの夜、夏葉が突然倒れて異常な成長を起こす。 ここから透が原因を追い始め、のどかな日常描写が少しずつ伝奇へ傾いていく。 この転調の設計が本作の評価を決めています。 新規書き下ろし部分だけでテキスト容量2.3Mという分量があり、読み物として十分に重量級です。
田舎の空気感を丁寧に積み上げてから異変を持ち込む構造なので、 序盤が緩やかに感じられるのは事実です。 ここで投げ出すと本作の良さには辿り着けません。腰を据えて読む作品だと考えてください。
声優22名・ボイス14時間という音声の厚み
本作で最も数字が突出しているのが音声です。クレジットされた声優は22名。 陸奥出流、杏子御津、佐倉江美、ヒマリ、かわしまりの、一色ヒカル、鈴田美夜子、桐谷華ら、 当時の実力派が並びます。
そしてボイスドラマ・システムボイス・着ボイスを合わせて計14時間。 これは本編のボイスとは別枠の数字です。 システムボイスと着ボイスまで収録されているということは、 ゲームを終えた後も音声だけで楽しめる設計になっているということでもあります。
ボーカルコレクションが全26曲、しかもwave形式というのも見逃せません。 圧縮音源ではなく非圧縮で収録されているため、音楽単体で聴く価値があります。 音声まわりだけで見れば、この価格帯の作品として頭ひとつ抜けています。
500円セールなら迷わず買っていい
500円でボイス14時間、ボーカル26曲、テキスト2.3M分。 単純に時間単価で考えても、これを下回るエンターテインメントを探すほうが難しいでしょう。
ただし前述のとおり、重複購入だけは500円でも無駄になります。 安いからと反射的に買う前に、ライブラリの確認だけは挟んでください。 そこさえクリアすれば、セール時の本作は文句なしの買いです。
5軸スコアと評価の内訳
シナリオ(19点)と音声(18点)が本作の二本柱です。 進行豹の伝奇としての完成度と、22名・14時間という音声量がそのまま点数に出ました。
一方コスパ(16点)が伸びなかったのは、定価13,037円に対して 単体版が7,945円で買えてしまうためです。差額約5,000円で得られるのは無印版と追加シーン群。 ここに5,000円の価値を見出せるかは人によります。 ビジュアル(18点)は解像度1280×720という仕様が響きました。 Curaの絵そのものは今見ても十分に魅力的です。
作品スペック一覧
| 正式タイトル | ものべの 全部入り |
|---|---|
| ブランド | Whisp |
| 価格 | 13,037円 ※不定期のセールで500円まで下がることがある |
| 販売日 | 2019年8月6日 |
| 作品形式 | アドベンチャー/シネマティックノベル(音声あり・音楽あり)/3作品パック |
| 年齢指定 | R-18(ソフ倫受理番号 0007003D) |
| ジャンルタグ | 着衣/妹/幼なじみ/妖怪/コスプレ/異種えっち/近親もの/複数プレイ・乱交 ほか |
| シナリオ | 進行豹、詠野万知子 |
| イラスト | Cura(原画)、Tam-U(妖怪イラスト) |
| 音楽 | studio sync、Beat system/ちさと |
| 出演 | 陸奥出流、杏子御津、佐倉江美、ヒマリ、かわしまりの、一色ヒカル、鈴田美夜子、宮沢ゆあな、篠原ゆみ、桐谷華 ほか計22名 |
| テキスト量 | 新規書き下ろし部分のみで2.3M |
| 音声収録 | ボイスドラマ・システムボイス・着ボイス 計14時間/ボーカル全26曲(wave) |
| ファイル容量 | パック販売のため個別作品を参照 |
| 動作環境 | Windows 7/8/8.1/10、CPU Core 2 Duo 2.4GHz以上、メモリ2GB以上、VRAM 256MB以上、1280×720フルカラー ※Mac非対応 |
| 体験版 | 販売ページに記載なし |
| 重複注意 | 『ものべの』『ものべの -happy end-』『同 アペンド&ボイスドラマフルセット』と内容が重複 |
良かった点・気になった点
良かった点
- 声優22名、ボイス計14時間という音声の物量が圧倒的
- ボーカル26曲が非圧縮のwave形式で収録されている
- 妖怪と人が共存する田舎の空気感を丁寧に積み上げた世界観
- 日常から伝奇へ転調する構造の設計が巧み
- アペンド適用済みで、パッチの当て忘れが起きない
気になった点
- 既存の単体版・アペンドと内容が重複する。購入履歴の確認が必須
- 体験版の記載がなく、購入前に中身を試せない
- 解像度1280×720で、現行のフルHD作品とは精細さに差がある
- 序盤の日常パートが長く、伝奇要素まで距離がある
- 声優22名のキャラクター対応表がページに載っておらず、誰が誰か事前に分からない
結論:誰が買うべきか
シリーズ未所持で、じっくり読ませる伝奇ものを探している人に向いています。 田舎の日常描写と妖怪譚が地続きになった世界観は独特で、 似た手触りの作品はそう多くありません。音声目当てで買っても満足度は高いはずです。
既にシリーズを持っている人は、原則として見送りでいいでしょう。 重複部分が大きすぎます。追加分だけを狙うなら、 単体の『アペンド&ボイスドラマフルセット』を検討するほうが筋が通ります。
そして500円のセールに遭遇したら、未所持なら即確保で構いません。 この内容量が500円で手に入る機会は、そう頻繁には巡ってきません。