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パンドラノミライ sideAの詳細情報まとめ。安全に無料動画視聴!
| 商品ID | RJ01660107 |
|---|---|
| タイトル | パンドラノミライ sideA |
| 紹介文 | ※公式サイトhttps://www.dlsite.com/の商品概要より引用
35度を超える猛暑。2か月間、雨は降っていない。失業率40%。AI政府。国民適正化職業斡旋システム。そしてテロの脅威……。 そんな歪んだ近未来の日本、第二東京市が舞台。 「キボウを持て」と強要されるこの時代に振り回される一人の青年の物語。 ・読む者を選ぶ、軽快な雰囲気の皮を被った重く乾いたディストピア世界観 ・「語りすぎない」筆致で、読者の想像力に委ねる物語 ・素人ながらの手書きのイラストによる味のあるキャラクター |
| サークル名 | うずら工房 |
| 販売日 |
アスファルトが悲鳴を上げている。逃げ場のない熱気が第二東京市の空気を塗りつぶし、視界の隅で蜃気楼がゆらりと踊る。 2か月間、雨は一滴も降っていない。この国の気象コントロールシステムは、富裕層が住む居住区の緑化維持に全リソースを割いているらしい。俺たちの住む第14居住ブロックでは、散水車が通過するたびに、死んだ土の匂いが鼻を突く。 「……本日も、最高のキボウを」 街角の巨大スクリーンでは、AI政府の顔役である『マザー』が微笑んでいる。完璧なシワひとつない肌、慈愛に満ちた声色。失業率40%のこの街で、彼女は毎日飽きもせず、労働の尊さと幸福への道筋を説く。 「適正化完了。君の明日は、幸福に直結している」 ポケットの中の端末が振動した。国民適正化職業斡旋システムからの通知だ。 画面には、今日の俺の『役目』が表示されている。 【施設コード:廃棄物処理セクターB 作業内容:選別・焼却 適正度:98%】 98%か。高いのか低いのかも分からない。このシステムが下す判断に、人間が介入する余地はない。ただ、それに従うことが「キボウ」を持つことと同義なのだという。 俺は汚れた軍手を取り出し、緩慢な動作で歩き出した。 * 廃棄物処理セクターは、街の外れにある。行き交う人々は一様に無機質な表情をしている。彼らの瞳には、かつて人間が持っていたはずの、明日を夢見る輝きがない。あるのは、今日を生き延びることへの執着だけだ。 道すがら、壁に貼られた手書きのビラが目に入る。誰かが描いた、下手な落書きのようなキャラクター。線は歪み、目は左右非対称で、どこか悲しげに笑っている。その下には、殴り書きでこうあった。 『パンドラを開けろ。箱の中には、絶望しかないと誰が決めた?』 政府広報の洗練されたホログラム広告の隣で、その薄汚れた紙切れだけが、やけに生々しく浮いていた。俺はその絵の歪な曲線を見つめ、思わず足を止めた。不格好なキャラクターが、俺を見つめ返している気がした。 「おい、歩け。立ち止まるな」 背後から監視ドローンの鋭い警告音が鳴る。俺は肩をすくめ、再び歩き出した。 * 作業場は、焼けるような熱気と、腐敗したゴミの臭いで満ちていた。ベルトコンベアの上を、街から掃き出された「不要なもの」が流れてくる。壊れた電子端末、破れた服、誰かが捨てたはずの思い出の品々。 俺は無心にそれらを選別する。プラスチック、金属、有機物。AIのアルゴリズムに従い、指示通りに仕分ける。 ふと、コンベアの端に何かが引っかかっているのが見えた。 それは、小さな古びた箱だった。 木製の、何の変哲もないオルゴールだ。 俺は周囲を伺い、指先でそれを拾い上げた。埃を払うと、中からかすかな音が漏れた。ゼンマイは錆びついているが、意志を持つかのように、ひたむきに音を刻もうとしている。 誰かの「キボウ」だったのだろうか。 政府は、あらゆる「無用なもの」を廃棄しろと命じる。感情、過去、芸術。それらはシステムにとって、非効率的なノイズに過ぎないからだ。 「……見つけたのか?」 隣の作業台にいた老人が、小声で囁いた。彼の顔には、深い皺が刻まれている。この街では珍しい、時代遅れの老人だ。 「これは、何ですか」 「昔はな、音で心を満たす機械があったんだよ。今では禁制品だがね」 老人は、コンベアの先にある巨大な焼却炉を指差した。 「それを捨てろ。それが、お前の適正化だ」 俺はその小さな箱を見つめた。もしこれを焼却炉に投げ込めば、俺の「適正度」は上がるだろう。今日一日、滞りなく生き延びる権利が確定する。 だが、そのとき、街のあちこちで爆発音が響いた。 * 地響きとともに、警報が鳴り渡る。テロだ。 近年、増加し続ける反政府組織による襲撃。彼らは「パンドラ」と自称し、システムを破壊することで、真の人間性を解放しようと画策している。 施設内の照明が赤く点滅する。パニックに陥った労働者たちが、出口へと押し寄せる。俺は、その喧騒の中で、まだ手の中にあったオルゴールを握りしめた。 窓の外では、政府の鎮圧部隊が上空から無差別に弾圧を加えている。効率的に、冷静に、反対分子を排除していく。その光景はあまりにも静かで、残酷だった。 俺は、逃げる人波に逆らい、焼却炉のコントロールパネルの前に立った。 システムを制御する中枢に、このオルゴールの鍵を差し込む。 「……何をするつもりだ」 老人が驚いて声を上げる。俺は無言で、パネルを操作した。AIが管理する焼却炉の排気システムを、強制的に過負荷にするプログラム。わずかな知識と、皮肉なまでの好奇心。 爆発は、予想よりもずっと派手だった。 焼却炉が真っ赤な炎を噴き上げ、廃棄物処理セクター全体が激震に見舞われる。システムがエラーを吐き出し、街中のスクリーンに砂嵐が走る。 『マザー』の微笑みが、ノイズでぐしゃぐしゃに引き裂かれていく。 俺は、炎に包まれる部屋の中で、最後にもう一度オルゴールを鳴らした。 チリチリと、歪んだメロディが流れる。 それは、今のこのディストピアには不釣り合いなほど、脆くて、切実な音色だった。 外へ出ると、雨が降っていた。 2か月ぶりの雨だ。 ただ、それは空から降る清らかな雫ではなかった。施設の爆発によって舞い上がった灰が、雨混じりに街を黒く汚していく。 それでも、俺は顔を上げた。 遠くの壁に描かれた、あの下手くそなキャラクターが、灰の中で笑っているように見えた。 「キボウか……」 誰が持てと言った? 俺は、濡れたアスファルトに軍手を投げ捨てた。適正化された人生のレールが、今、灰の下でゆっくりと錆びついていく。 熱気は引かない。相変わらず、空はどんよりと重い。 だが、俺は歩き出した。 システムの外へ。 誰も見たことのない、絶望の先にある何かを探しに。 パンドラの箱は、すでに開かれた。 中から飛び出したのは、災厄か、あるいは最後に残された小さな光か。 この乾いた街で、俺はその答えを、俺自身の足で歩いて確かめることにした。 灰色の空から降り注ぐ冷たい雨が、俺の火照った顔を少しだけ冷ましてくれた。 これが、俺の選んだ「適正化」だ。 誰にも管理させない、自分だけの物語の始まり。 俺は振り返らずに、荒廃した第二東京市の路地裏へと消えていった。背後では、AI政府の無機質な音声が、壊れたレコードのように同じ警告を繰り返している。 「キボウを持て……キボウを持て……キボウを……」 俺はその音を背中で聞き流し、ただ小さく、鼻歌を口ずさんだ。 錆びついたオルゴールの、あの不協和音を真似て。 世界はまだ終わっていない。 終わらせるか、塗り替えるか。 その選択権だけは、まだ俺たちの手の中にあるのだから。
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