【二次エロ】誰かの怪談inside砂糖ミルク 通常版【アダルトAVアニメ・ゲーム】

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## 蜜の海

　彼女は、いつもと同じように、あの古びたアパートの階段を上っていた。踊り場に差し掛かると、ふと足を止める。壁に貼られた色褪せたポスター。もう何年も前に終わったはずの映画の、その役者たちの虚ろな目が、暗がりからこちらを覗いているような気がした。気のせいだろう。彼女はそう自分に言い聞かせ、再び一歩を踏み出した。

　部屋のドアを開けると、いつものように甘ったるい匂いが鼻腔をくすぐる。砂糖とミルク。彼女が一人暮らしを始めてから、ずっとこの部屋に染み付いた、独特の香りだった。昔、この部屋に住んでいたという老婦人が、毎日砂糖とミルクでコーヒーを淹れていたのだと、大家は言っていた。その老婦人は、ある日突然、姿を消したらしい。

　彼女は、その話を聞いた時、妙な胸騒ぎを覚えた。だが、家賃の安さと、静かな環境に惹かれ、この部屋に住むことを決めたのだ。今思えば、それは大きな間違いだったのかもしれない。

　家具は最小限。ベッドと、小さなテーブル、そして本棚。本棚には、彼女が読みかけの本が数冊並んでいる。どれも、どこか退屈で、現実逃避を求めるような物語ばかりだった。彼女は、最近、本を読むことすら億劫になっていた。読むべき本はたくさんあるのに、ページをめくる指が、鉛のように重かった。

　窓の外は、もうすっかり暗くなっていた。街灯の灯りが、部屋の片隅にぼんやりと影を落としている。その影が、時折、生き物のように蠢いているように見えた。彼女は、その影に目を凝らした。何もいない。ただの影だ。しかし、その影は、次第に濃く、大きく、部屋全体を覆い尽くそうとしているように感じられた。

　彼女は、ベッドに腰を下ろした。冷たいシーツの感触が、肌に張り付く。壁の時計が、カチカチと、重い音を立てて時を刻んでいる。その音さえも、今は不吉な響きを帯びているように思えた。

　いつからだろうか。この部屋に住み始めてから、彼女は眠れなくなった。夜になると、耳鳴りのような、囁くような声が聞こえてくるのだ。それは、はっきりとした言葉ではない。ただ、何かを訴えかけているような、悲痛な響きだった。そして、その声は、次第に大きくなり、彼女の意識を飲み込んでいく。

　ある晩、彼女は夢を見た。夢の中で、彼女は広大な蜜の海に沈んでいた。甘ったるい蜜が、彼女の全身を包み込む。息苦しいほどの甘さ。逃れようと藻掻けば藻掻くほど、蜜は彼女の身体に絡みつき、深く、深く沈んでいく。そして、その蜜の奥底から、あの老婦人の顔が、ぼんやりと浮かび上がってきた。虚ろな瞳で、彼女を見つめている。

　目が覚めると、部屋は静まり返っていた。しかし、あの甘ったるい匂いは、一層強くなっているように感じられた。まるで、部屋全体が、蜜で満たされているかのようだ。彼女は、ベッドから這い起き、キッチンに向かった。冷蔵庫を開け、牛乳を取り出す。そして、マグカップに、砂糖を山盛りに入れた。

　熱湯を注ぐ。湯気と共に、甘い香りが立ち込める。彼女は、スプーンで、その甘い液体をゆっくりとかき混ぜた。スプーンが、カップの底に触れるたび、カチリ、と乾いた音が響く。その音は、まるで、彼女の身体の骨がきしむ音のように聞こえた。

　一口、飲む。喉を焼くような甘さ。しかし、彼女は止めることができなかった。もう一口、もう一口と、夢中で飲み続けた。身体の芯から、甘さが染み渡っていく。そして、彼女の意識は、次第に混濁していった。

　次の日、彼女は会社を休んだ。電話をしようと思ったが、指が震えて、電話機に触れることができなかった。窓の外は、相変わらず暗い。いや、昨日よりも、さらに暗くなっているように見えた。

　部屋に一人でいると、あの声が、ますます鮮明に聞こえてくるようになった。それは、もう、囁きではなかった。はっきりと、彼女の名前を呼んでいた。

「〇〇（彼女の名前）……」

　彼女は、声のする方へ、ゆっくりと顔を向けた。部屋の隅。そこに、人影のようなものが、ぼんやりと立っていた。それは、あの老婦人の姿だった。しかし、その姿は、どこか歪んでいた。手足は不自然に伸び、顔は、まるで溶けた蝋のように、ぐにゃりと歪んでいた。

　彼女は、恐怖に身を震わせた。逃げようとした。しかし、身体が、全く動かない。まるで、床に縫い付けられたかのようだ。

　老婦人の姿は、ゆっくりと、彼女の方へ近づいてくる。その足音は、しない。ただ、蜜が、彼女の周りに溜まっていくような、じっとりとした気配だけが、濃厚に漂っていた。

　老婦人の手が、彼女の顔に伸びてくる。その指先は、まるで砂糖のように白く、冷たい。彼女は、思わず目を閉じた。

　その瞬間、甘ったるい匂いが、一層強くなった。そして、彼女の耳元で、あの声が、囁いた。

「ここへ……いらっしゃい……」

　彼女は、ゆっくりと目を開けた。目の前には、あの老婦人の虚ろな目が、じっとこちらを見つめている。そして、その目の中に、彼女自身の姿が、映っていた。しかし、それは、いつもの彼女ではなかった。肌は、蜜のようにテカテカと光り、髪は、まるで砂糖の塊のように、固まっていた。

　彼女は、自分の身体に触れた。指先が、ひんやりとしている。そして、その指先から、甘い蜜が、滴り落ちた。

　部屋は、もはや砂糖とミルクの匂いだけではなかった。それは、彼女自身の、甘い、甘い、甘すぎる匂いになっていた。彼女は、そのまま、蜜の海に沈んでいくかのように、ゆっくりと、その場に溶けていった。

　翌日、彼女の部屋のドアは、開いたままだった。部屋の中は、相変わらず甘ったるい匂いが充満していた。しかし、そこには、もう彼女の姿はなかった。ただ、床に、砂糖のような白い粉が、微かに残っているだけだった。そして、その粉は、まるで、誰かの消え残った欠片のように、静かに、部屋の隅に、集まっていた。

　やがて、この部屋に、新しい住人がやってくるだろう。そして、その住人もまた、この甘ったるい匂いに誘われるように、ゆっくりと、この蜜の海へと沈んでいくのかもしれない。この部屋は、決して、解決してスッキリするような場所ではない。ただ、静かに、恐怖が、じわりと、積み重なっていく場所なのだ。ジャパンホラーの、底なしの恐怖が、この部屋には、いつまでも、息づいている。