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| サークル名 | ☆きりか・すたいる☆ |
| 販売日 |
## 鉄塊と薔薇の誓い 澄み切った青空が、王都エルドラの城壁に映えていた。その城壁の最上階、騎士団長室に、一人の姫騎士が立っていた。その名は、リリアナ・フォン・ローゼンブルク。鍛え抜かれた肉体と、凍てつくような銀色の髪、そして鋼の意志を宿した碧眼を持つ、王国の誇り高き守護者である。 「騎士団長、報告は以上です。」 報告を終えた屈強な騎士が、一礼して部屋を出ていく。リリアナは窓の外に広がる王都を眺めた。賑やかな市場の喧騒、人々の笑い声。それは、彼女が守り抜きたいと誓った平和な日常だった。 しかし、その平和は、影によって蝕まれつつあった。辺境で頻発する謎の襲撃、そして王都へと忍び寄る不穏な気配。リリアナはその全てを、己の剣と騎士としての誇りをかけて、打ち砕く決意を固めていた。 その夜、リリアナは密かに城を抜け出した。向かう先は、王都の地下に広がる、裏社会の巣窟。そこで彼女は、ある情報を掴もうとしていた。それは、最近暗躍する盗賊団の首領、通称「蛇の爪」に関するものだ。 地下街は、地上とは全く異なる世界だった。薄暗い提灯の灯りが、湿った空気と妖しい影を揺らし、不気味な雰囲気を醸し出している。リリアナは、騎士としての正体を隠すため、男装をしていた。しかし、その洗練された佇まいと、鍛えられた体躯は、隠しきれない気品を放っていた。 「お嬢ちゃん、こんなところで何してるんだい?危ないぜ。」 路地裏から現れたのは、一人の女だった。彼女は、細身ながらも鋭い目つきをし、口元には嘲るような笑みを浮かべている。その手には、細い銀のナイフが握られていた。 「貴女は?」 リリアナは静かに問い返した。 「あたしかい?まあ、この辺りを仕切ってる者の一人さ。んで、お嬢ちゃんは?迷子かい?」 女は、リリアナの顔をじろじろと見つめる。その視線に、リリアナは警戒心を強めた。 「ある人物を探している。」 「ほう?どんな人物だい?もしかして、あたしたちの親玉、「蛇の爪」のことかい?」 女の言葉に、リリアナの心臓が跳ねた。まさか、こんな場所で、この人物に巡り合うとは。 「貴女が、「蛇の爪」…?」 「さあ、どうだろうね。まあ、その程度には名前が通ってるらしいよ。で、お嬢ちゃん、あんた、何が目的なんだい?」 女は、ナイフの先をリリアナに向けた。その目は、獲物を狩る獣のようにギラついている。 「私は、王国の騎士だ。貴女の悪行を、ここで終わらせるために来た。」 リリアナの言葉に、女は愉快そうに笑った。 「騎士?ほう、面白い!でも、残念ながら、ここは騎士なんかが来る場所じゃない。もっと…激しい場所さ。」 女は、ナイフを巧みに操り、リリアナに襲いかかった。リリアナもまた、隠し持っていた短剣で応戦する。金属音が、暗い路地裏に響き渡った。 女の動きは、予想以上に素早く、そして狡猾だった。ナイフは、リリアナの鎧の隙間を狙い、鋭く突き刺さろうとする。リリアナは、騎士としての訓練で培った防御術と、持ち前の冷静さで、その攻撃を捌いていく。 しかし、女の攻撃は、次第に過激になっていった。彼女は、リリアナの動きを封じようと、関節を狙ったり、刃を隙間に滑り込ませようとしたりする。リリアナは、かすかに肌を傷つけられながらも、必死に耐えていた。 「ふん、騎士だかなんだか知らないが、その腰抜けそうな顔、どうにかならないのかい?」 女は、リリアナの顔を挑発するように見つめながら、さらに攻撃を仕掛ける。その言葉は、リリアナのプライドを深く傷つけた。 「黙りなさい!」 リリアナは、叫びながら、渾身の一撃を繰り出した。しかし、女はそれを巧みに避け、リリアナの足元にナイフを滑り込ませる。 「うっ!」 バランスを崩し、リリアナは膝をついた。その瞬間、女のナイフが、リリアナの腿の間の、鎧の隙間を狙って、鋭く食い込んだ。 「ぐあっ!」 激しい痛みが、リリアナの全身を駆け巡った。思わず、声にならない呻きが漏れる。女は、その様子を楽しんでいるかのように、さらにナイフを動かす。 「あらあら、そんなに痛いかい?でも、これはまだ始まりさ。」 女は、リリアナの口を塞ぎ、さらにナイフを食い込ませようとする。リリアナは、屈辱と痛みに耐えながら、必死に抵抗した。しかし、体力の消耗と、集中力の低下は否めない。 その時、リリアナの脳裏に、守りたい人々の顔が浮かんだ。王国の民、そして信頼する仲間たち。彼女は、ここで屈するわけにはいかない。 「…くっ!」 リリアナは、最後の力を振り絞り、首元に隠していた細い短剣を抜いた。そして、女の腕に、狙いを定めて突き刺す。 「きゃああっ!」 女は、悲鳴を上げ、リリアナから距離を取った。リリアナもまた、傷ついた体を必死に起こす。 「…これで終わりだ。」 リリアナは、傷口を押さえながら、女に冷たく言い放った。女は、腕を押さえながら、リリアナを睨みつけている。 「…覚えてなさいよ、姫騎士さん。今度は、もっと…素晴らしいお返しをしてあげるわ。」 そう言い残し、女は暗闇に消えていった。 リリアナは、膝から崩れ落ちた。傷口からは、血が流れ続けている。しかし、彼女の心には、強い決意が宿っていた。この屈辱を、そしてこの痛みを、必ず晴らしてみせる。 王都エルドラの片隅で、鉄塊のような意志を持つ姫騎士は、己の誓いを、血と痛みに刻みつけた。そして、彼女の戦いは、まだ始まったばかりだった。
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