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・【JPG × 40】[切り抜きCG集]
※ notxt = テキストなし版のデータ

Twitter : https://twitter.com/nizipacokyu
Pixiv : https://www.pixiv.net/users/66518258

## 霧の淵、触手の胎動

夜の帳が下り、古ぼけたアトリエの灯りが静かに灯った。壁には未完成のイラストが乱雑に貼られ、床には絵の具のチューブが転がっている。その中心で、少年「ハル」はタブレットを食い入るように見つめていた。画面には、鮮やかな色彩で描かれた少女の姿。キャラクター名は「霞ミユ」。彼が何年もかけて生み出し、愛してやまない、彼の分身とも言える存在だ。

しかし、今ハルが見ているのは、いつものミユではない。画面の中のミユは、黒く粘ついた触手によって、抗うこともできずに囚われていた。不快な、しかしどこか魅惑的な映像。それは、彼が秘密裏に制作していた、禁断のCG映像だった。

「…ダメだ、こんなもの…」

ハルは顔を覆う。制作の過程で、彼はこの映像に魅入られ、描くこと自体に快感を見出していた。しかし、現実に目を向けると、胸の奥が締め付けられるような罪悪感が湧き上がる。

「でも、でも…」

彼の指は、無意識のうちにタブレットの画面を滑らせる。映像は続き、触手がミユの身体を這い、そして…

「やめて…！」

ハルは思わず叫んだ。映像の中では、触手がミユの奥深くへと侵入し、濃密な液体が溢れ出す。それは、彼が愛情を込めて生み出したミユに、残酷な現実を突きつけるかのような光景だった。

「これが、僕の…僕の作品…」

震える手で、ハルは映像を一時停止する。画面に映し出されたミユの表情は、苦痛とも恍惚ともつかない、歪んだものだった。

「こんなミユは、僕のミユじゃない…」

彼は立ち上がり、部屋を歩き回った。頭の中では、彼が描いた無数のミユの笑顔が駆け巡る。明るく、優しく、そして何よりも「自由」なミユ。

「あいつを、こんな姿にしたのは、僕なんだ…」

彼は再びタブレットに目を落とす。映像の続きには、さらに過激な描写が待っている。しかし、ハルはもう、それを見る気にはなれなかった。

「これで、全部終わりだ」

彼は、タブレットの電源を落とした。画面が暗転し、部屋には静寂だけが戻ってきた。しかし、その静寂は、ハルの心に澱のように沈殿した罪悪感を、より一層際立たせた。

数日後、ハルはアトリエにこもっていた。しかし、タブレットはもう開かない。代わりに、彼はキャンバスに向き合い、新たな絵を描き始めていた。それは、触手も、苦痛も、何もかもない、ただ純粋なミユの笑顔だった。

「ミユ…」

彼は筆を走らせる。触手の代わりに、柔らかな光を描き入れる。絶望の代わりに、希望の輝きを。

「君は、もっと自由で、もっと輝いていいんだ」

彼は、自分自身に言い聞かせるように言葉を紡いだ。CG映像の制作は、彼にとって一種の逃避だったのかもしれない。現実の自分から目を背け、創造の世界に没頭することで、彼は自分自身の孤独や不安を紛らわせていた。

しかし、その逃避は、彼が愛するミユを、歪んだ形で傷つけることになっていた。

「ごめん、ミユ」

彼は静かに呟いた。そして、筆を置く。キャンバスに描かれたミユは、穏やかな微笑みを浮かべていた。それは、彼が本当に描きたかった、本来のミユの姿だった。

「もう、あんなものは描かない」

彼は決意を固める。CG映像のファイルは、すべて削除した。もう二度と、あの暗闇に囚われることはないと、彼は誓った。

そして、彼は再び筆を取る。今度は、もっと明るい、もっと希望に満ちたミユを描くために。触手の代わりに、風にそよぐ髪を描くために。絶望の淵から、再び輝きを取り戻すミユの姿を、彼は全力で描こうとしていた。

アトリエの窓から差し込む朝日が、彼の描くミユの顔を照らし出す。それは、まるで新たな始まりを告げる光のようだった。

ハルは、もう一度、ミユに語りかける。

「大丈夫だよ、ミユ。君は、僕の宝物だから。どんな時も、君の笑顔が、僕の光なんだ」

彼の言葉は、静かにアトリエに響き渡り、やがて風に乗って、どこか遠くへと運ばれていった。触手の残した傷跡は、まだ彼の心に残っていたかもしれない。しかし、彼はもう、その傷跡に囚われることはなかった。

彼は、かつてないほどの決意をもって、筆を握りしめる。描かれるのは、触手の悪夢から解き放たれた、自由で、輝かしいミユの姿。それは、彼自身が、暗闇から光へと、再び歩み出すための、最初の一歩でもあった。

夜の帳は完全に明け、新しい一日が始まろうとしていた。ハルは、タブレットの画面に映し出される、彼が描いたCG映像の削除確認画面を、静かに見つめていた。それは、過去の自分との決別を意味していた。

「さよなら、あの頃の僕」

彼は、指先で「削除」ボタンをタップした。画面から、あの忌まわしい映像が跡形もなく消えていく。胸の奥には、まだ微かな重みが残っているような気もしたが、それ以上に、軽やかな解放感があった。

彼は、アトリエの窓を開け放った。新鮮な朝の空気が流れ込み、部屋の淀んだ空気を一掃する。外からは、鳥のさえずりが聞こえてくる。それは、彼が失ってしまっていた、日常の穏やかな音だった。

「ミユ…」

彼は、新しいキャンバスに、再びミユの姿を描き始めた。触手も、影もない、ただ純粋な彼女の笑顔。輝く瞳には、希望の光が宿っている。

「君は、もっと、もっと自由に、羽ばたけるんだ」

彼が描くミユは、まるで生きているかのように、キャンバスの上で微笑みかける。その笑顔は、ハル自身の心にも、温かい光を灯していくようだった。

彼は、もう一度、CG映像のファイル情報を見返した。同梱されていたという「中出し動画」や「CG集」。それらは、彼が迷い込んだ、暗く、危険な森の入り口に過ぎなかった。しかし、彼はもう、その森の奥へと進むことはない。

「これで、全部終わりだ」

彼は、胸を張って、そう言った。そして、筆を走らせる。描かれるのは、触手の痕跡を完全に消し去った、清らかなミユの姿。それは、彼がこれから歩む、新しい道標でもあった。

アトリエは、絵の具の匂いで満たされていた。しかし、それはもはや、罪悪感や後悔の匂いではなかった。それは、希望と、再生の、甘く、懐かしい香りだった。

ハルは、ミユの笑顔を見つめながら、静かに呟いた。

「ありがとう、ミユ。君が、僕を救ってくれたんだ」

彼は、もう一度、筆を動かす。描かれるのは、自由な風に髪をなびかせる、光り輝くミユの姿。それは、彼がこれから描いていく、無限の可能性を秘めた、未来の物語の始まりだった。

触手の残した傷跡は、もう彼を縛り付けることはない。彼は、その傷跡を乗り越え、より強く、より純粋な「表現」を求めて、歩み出す。それは、彼が愛するミユへの、そして自分自身への、何よりも真摯な誓いだった。

朝日が、アトリエ全体を金色に染め上げていた。ハルは、その光の中で、満面の笑みを浮かべたミユの姿を、悠然と描き続けていた。触手の胎動は、もう聞こえない。聞こえるのは、ただ、希望に満ちた、新しい命の鼓動だけだった。