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弾幕ごっこを盛り上げたい、洩矢諏訪子
信仰を集めたい、八坂神奈子
イベントが楽しみな、東風谷早苗

彼女たちは、盛大な祭を計画した。
弾幕、お囃子、酒にまみれた7日間を祀りたおせ！

## 洩矢神社、七日間の饗宴

洩矢神社の境内は、活気に満ち溢れていた。本来なら静寂に包まれるはずのこの場所は、今や熱気に渦巻いている。原因は、一人の神、洩矢諏訪子。彼女は、この時期恒例となる「弾幕ごっこ」を、かつてないほど盛大に盛り上げようと、静かな境内を揺るがすほどの計画を立てていたのだ。

「ねー、早苗ちゃん、神奈子様！ あと二日よ！ 準備は順調？」

諏訪子は、ぴょんぴょんと軽やかに跳ねながら、二人の仲間に声をかけた。一人は、普段は神官として真面目に神社を仕切っている東風谷早苗。もう一人は、諏訪子の叔母にあたる、洩矢神社の主祭神、八坂神奈子だ。

早苗は、汗を額に滲ませながら、分厚い書類を抱えていた。賑やかな境内とは裏腹に、彼女の表情はむしろ切羽詰まっている。

「順調…とは、言えません、諏訪子様。奉納品の手配、出店の許可、それに、弾幕ごっこのための特殊弾の製造…全てが、予定より遅れています。」

「えー、そんなに大変？ 私、弾幕のことしか考えてなかったからなぁ。」

諏訪子は、悪びれる様子もなく、ケラケラと笑った。彼女にとって、弾幕ごっこは人生そのもの。その興奮と高揚感だけが、彼女の全てを動かす原動力だった。

一方、神奈子は、境内の一角に設けられた茶屋で、悠然と茶を啜っていた。その表情は、早苗とは対照的に、穏やかな笑みに満ちている。

「ふむ。早苗は心配性じゃのう。だが、心配はいらん。わしの信仰さえ集まれば、すべてはうまくいく。」

神奈子の言葉に、早苗は思わずため息をついた。彼女の言う「信仰」とは、文字通り、参拝客からの祈りや感謝の念を指す。祭りを成功させるためには、多くの人々が神社に足を運び、神々に感謝の念を捧げることが不可欠だ。そして、その信仰は、彼女たちの力となる。

「でも、神奈子様。今回は、ただの祭りじゃありません。弾幕ごっこに、お囃子、それに、新しく設えるという酒場まで…。これら全てを成功させるには、諏訪子様の弾幕の面白さだけじゃなく、皆が楽しめるような、神頼みの要素も必要です。」

「わかっておるわ。だからこそ、わしはこの祭りに期待しておるのじゃ。この七日間、洩矢神社に集う者すべてを、祭りの熱狂で包み込み、わしへの信仰を深めてもらう。それが、わしの狙いじゃ。」

神奈子は、茶碗を置くと、意味深に微笑んだ。彼女の目には、祭りの成功だけでなく、その先の、より大きな目的が宿っているようだった。

祭りの初日。早苗が心配していた通り、初日はまだ閑散としていた。しかし、諏訪子の情熱は、冷めるどころか、さらに燃え盛るばかりだった。

「まだまだ、こんなもんじゃないわよー！ みんな、もっと弾幕を楽しもうよ！」

彼女は、自ら編み出した特殊弾を、軽やかに空へと放った。それは、色とりどりの光を放ち、空中に花火のように広がる。その見事な弾幕に、境内の数人が足を止め、歓声を上げた。

「すごい！ なんだ、あの弾幕！」
「初めて見た！ あれが、洩矢諏訪子様の弾幕か！」

その声が、波紋のように広がる。諏訪子の弾幕は、噂となって、瞬く間に人々の耳に届いた。

二日目。境内の賑わいは、一気に増した。遠方から訪れた人々が、諏訪子の弾幕を一目見ようと、続々と集まってくる。早苗は、その様子を見て、ようやく安堵の息をついた。

「諏訪子様、皆、とても楽しんでいますよ！」
「でしょー！ 私の弾幕は、みんなを笑顔にする魔法だから！」

諏訪子は、得意げに胸を張る。彼女の周りには、既に多くの人々が集まり、弾幕ごっこに興じていた。子供たちは、歓声を上げながら、色とりどりの弾幕を避け、大人たちは、懐かしい童心に帰って、笑顔で弾幕を撃ち合っている。

神奈子は、そんな光景を茶屋から静かに見守っていた。彼女の顔には、満足そうな笑みが浮かんでいる。

「やはり、わしの信徒たちは、祭りが好きじゃ。この賑わいこそが、わしへの信仰の証じゃ。」

祭りが進むにつれて、洩矢神社の賑わいは増していく。三日目には、お囃子の音色が境内を響き渡り、四日目には、新設された酒場が、連日賑わいをみせた。人々は、酒を酌み交わし、笑い声を響かせ、祭りの熱狂に身を任せていた。

早苗は、相変わらず忙しく立ち働いていたが、その顔には、当初の切羽詰まった表情は消え、祭りの成功を実感する喜びが満ちていた。

「皆様、本当にありがとうございます！ 諏訪子様の弾幕、お囃子、そして、神奈子様のおかげで、こんなに素晴らしい祭りになりました！」

早苗の言葉に、集まった人々は、笑顔で頷いた。彼らは、この祭りで、日常を忘れ、心からの楽しみを見出していた。

祭りの六日目。空は、祭りの熱気に応えるかのように、鮮やかな夕焼けに染まっていた。境内には、祭りのフィナーレを惜しむかのような、穏やかな熱気が満ちている。

諏訪子は、疲れを感じさせないほど、元気いっぱいに弾幕を撃ち続けていた。彼女の弾幕は、夕焼け空に、さらに鮮やかな彩りを添えている。

「あと一日！ 最後まで、みんなで弾幕を楽しもうね！」

神奈子は、茶屋の窓から、夕日に照らされた諏訪子の姿を見つめていた。彼女の表情には、達成感と、そして、かすかな寂しさのようなものが混ざっていた。

「わしの信徒たちは、満足しておるかのう。この祭りが、彼らの心に、わしの存在を深く刻み込むことを願うばかりじゃ。」

祭りの最終日。早苗は、祭りの片付けをしながら、達成感に満ちた笑顔を浮かべていた。

「皆さん、本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました！」

人々は、名残惜しそうに境内を後にしていった。祭りは終わるが、彼らの心には、この七日間の鮮烈な記憶が刻み込まれたことだろう。

神奈子は、茶屋で一人、静かに佇んでいた。彼女の顔には、祭りの成功を祝う穏やかな笑みが浮かんでいる。

「ふむ。満足じゃ。この七日間で、わしの信仰は、かつてないほど深まったことじゃろう。」

諏訪子は、片付けを手伝いながら、早苗に話しかけた。

「ねぇ、早苗ちゃん。来年も、もっともっとすごい弾幕ごっこをしようね！」

早苗は、諏訪子の言葉に、優しく微笑み返した。

「ええ、諏訪子様。来年も、皆が楽しめる、素敵な祭りにしましょう。」

洩矢神社に、静寂が戻りつつあった。しかし、その静寂の中には、祭りの熱気、人々の笑顔、そして、神々の願いが、確かに息づいていた。弾幕、お囃子、酒にまみれた七日間。それは、洩矢神社に集う者すべてを、祭りの熱狂で包み込み、神々への信仰を深めた、忘れられない饗宴となったのである。そして、この祭りは、来年も、また、洩矢神社の境内を、賑やかに彩ることだろう。