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## 俺の家、まさかのギャル・リバイバル・カフェ化計画

「……え、マジで？」

俺、桐島悠（きりしま ゆう）は、目の前の光景を信じられずに固まっていた。リビングのソファには、見慣れない、しかしどこか強烈なオーラを放つ女性たちが数人。全員、キュートでゴージャスなギャルだった。

「あ、悠！おっはよー！」

一番手前に座っていた、ピンク色の髪をしたギャルが、屈託なく手を振る。彼女の名前は、橘 蘭（たちばな らん）。最近、俺の家の近所に越してきたらしい。そして、なぜか、俺の家を「秘密基地」と呼び、週末になると友達を連れて集まるようになったのだ。

「お、おはよう…って、蘭、また友達連れてきてるじゃん」

「だって、悠んち、なんか落ち着くんだよね～」

蘭がそう言うと、他のギャルたちも同意するように頷く。茶髪のロングヘアの、クールビューティー風なギャル、桜井 葵（さくらい あおい）。ショートカットで元気いっぱいの、山田 陽菜（やまだ ひな）。そして、派手なネイルが目を引く、佐藤 雫（さとう しずく）。彼女たちが、俺の家を、まるで自分たちのテリトリーのように占拠しているのだ。

事の発端は、数週間前。俺が夏休みの課題に追われ、部屋に閉じこもっていたある日、玄関のチャイムが鳴った。ドアを開けると、そこには蘭が立っていた。

「悠～！なんかさ、最近SNSで流行ってる『レトロカフェ巡り』って知ってる？うちの近所だと、なんか映えるカフェとか全然なくてさー」

「レトロカフェ…？それがどうしたの？」

「でさー、悠んちって、なんか昔ながらの雰囲気あるじゃん？だから、ちょっとだけ、お母さんが作ったお菓子とか置いて、レトロ風に飾って、友達と集まって写真撮ってもいいかなーって！」

最初は何を言っているのか理解できなかった。俺の家は、ごく普通の、昭和の香りがする一軒家だ。祖母が大切に使っていた骨董品や、昔の家族写真が飾られている。それを「レトロ風」だと？

しかし、蘭の熱意に押され、そして何よりも「お母さんの手作りお菓子」という甘い誘惑に負けて、俺は許可してしまったのだ。まさか、それがこんな展開になるとは、夢にも思わなかった。

「ほら、悠！このタピオカ、新作なんだ！絶対映えるから、試してみて！」

陽菜が、キラキラしたカップに入ったタピオカドリンクを差し出す。俺は恐る恐る受け取り、一口飲む。うん、美味しい。

「なんか、悠って、こういう甘いものとか、意外と好きそうじゃん？」

葵が、ニヤリと笑う。

「別に…」

俺は素っ気なく答えるが、内心では、彼女たちのキラキラした世界に、少しだけ憧れを抱いている自分もいた。彼女たちは、いつも楽しそうで、活気があって、そして何よりも、自分たちの「好き」を大切にしているように見える。

「ねえ、悠。この部屋、なんか落ち着くね」

雫が、窓辺に飾られた古いランプを指差しながら言う。

「おばあちゃんが使ってたやつだよ」

「へえ、おしゃれ。なんか、こういうレトロなもの、今すごく人気なんだよ。リバイバルっていうか」

リバイバル。その言葉が、俺の頭の中に響いた。俺の家は、彼女たちにとって、単なる「昔ながらの家」ではなく、「リバイバル・カフェ」としての価値を見出されているのだ。

「でさ、悠。今日さ、新しい仲間が増えるんだ！」

蘭が、興奮した様子で言い放った。

「え？また？もう十分じゃない？」

「だって、もっともっと、この『悠んち・リバイバル・カフェ』を盛り上げたいんだもん！」

その言葉に、俺は思わずため息をついた。俺の家は、いつの間にか、ギャルたちの「リバイバル・カフェ」へと変貌を遂げていた。そして、その勢いは止まることを知らなかった。

数日後、俺の家はさらに賑やかになった。玄関を開けると、そこには、これまで以上に多くのギャルたちが屯していた。彼女たちは、それぞれ個性的なファッションに身を包み、楽しそうに談笑している。

「悠、おかえり！」

「おかえりー！」

「今日ね、みんなで『懐かしの駄菓子屋さんごっこ』するんだ！」

蘭が、キラキラした目で俺を見つめる。駄菓子屋さんごっこ？一体、何が始まるのか、想像もつかない。

「ほら、悠も手伝ってよ！」

陽菜が、俺の手を引いて、リビングのテーブルに並べられた、大量の駄菓子へと誘う。ラムネ、うまい棒、きなこ棒、そして、懐かしいデザインのチョコレート。それらが、まるで宝石のように並べられている。

「わー、これ、懐かしいー！」

「これ、昔、お小遣いで買ってたやつだよ！」

ギャルたちは、童心に帰ったかのように、駄菓子を手に取り、歓声を上げる。彼女たちは、昔の日本を知っているわけではない。しかし、SNSで「レトロ」や「エモい」と称されるものに、強い魅力を感じているのだ。

俺は、そんな彼女たちの姿を眺めながら、不思議な感覚に包まれていた。俺の家が、こんなにも賑やかになるなんて、想像もしていなかった。そして、この、ギャルたちのキラキラした笑顔が、なんだか心地よかった。

「悠、このラムネ、お願い！」

葵が、俺にラムネ瓶を差し出す。俺は、彼女の要望に応え、ラムネのビー玉を押し込む。シュワシュワと音を立てて、ラムネが噴き出す。

「わー、きれい！」

雫が、スマートフォンでその様子を撮影する。

「これ、絶対インスタ映えするね！」

俺は、彼女たちの楽しそうな様子を見ながら、ふと思った。俺の家は、確かにギャルの溜まり場になった。しかし、それは、ただ騒がしいだけの場所ではない。彼女たちは、この「リバイバル・カフェ」で、自分たちの「好き」を共有し、新しい思い出を作っているのだ。

「ねえ、悠。なんか、この空間、すごく特別だよね」

葵が、俺の隣に座り、静かに言う。

「特別？」

「うん。なんか、色んなものが混ざり合ってる感じ。古くて新しい、みたいな」

古くて新しい。その言葉が、俺の心に響いた。俺の家は、祖母が残した思い出と、ギャルたちが持ち込んだ最新のトレンドが、奇跡的な融合を果たした場所なのだ。

「悠、このカフェ、ずっと続いてほしいな」

陽菜が、真剣な表情で俺に言う。

「え、ずっと？」

「うん。だって、ここでみんなで笑ったり、おしゃべりしたりするのが、すごく楽しいんだもん」

俺は、陽菜の言葉に、胸が熱くなるのを感じた。俺の家が、彼女たちにとって、そんなにも大切な場所になっているとは。

「…うん、俺も、そう思うよ」

俺は、素直にそう答えた。

その日から、俺の家は、さらに「悠んち・リバイバル・カフェ」として進化していく。ギャルたちは、週に数回集まり、手作りのお菓子を作ったり、レトロなゲームで遊んだり、そして、何よりも、お互いの「好き」を共有し、共感し合っていた。

俺は、そんな彼女たちの中心で、時には写真係、時には駄菓子の調達係、そして、時には、彼女たちの話に耳を傾ける聞き役となっていった。

ある日、蘭が、俺に尋ねてきた。

「ねえ、悠。このカフェの名前、どうする？」

「名前？」

「うん！『悠んち・リバイバル・カフェ』は、なんか長くて覚えにくいじゃん？」

俺は、少し考えた。そして、ふと、窓辺に飾られた古いランプに目が留まった。

「…『ランプハウス』とか、どう？」

「ランプハウス…！なんか、おしゃれで、温かい感じがする！いいね！」

蘭は、満面の笑みで頷いた。

こうして、俺の家は、正式に「ランプハウス」と名付けられた。それは、ギャルたちの活気と、俺の家の持つ懐かしい温かさが融合した、唯一無二の場所となった。

俺は、もはや、この状況を「ギャルの溜まり場」と呼ぶことをためらっていた。なぜなら、ここは、単なる溜まり場ではない。ここでは、世代を超えた、温かい交流が生まれているのだから。

そして、俺は、この「ランプハウス」での日々が、これからも続いていくことを、静かに願っていた。俺の家が、まさかのギャル・リバイバル・カフェ化計画。それは、俺の日常を、予想もしない、キラキラとしたものへと変えてくれたのだ。